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CFOとして日本のマーケットを成功に導くには?②

CFOとして日本のマーケットを成功に導くには?②

8ヶ月前 by Hisato Wakaizumi
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先々週に引き続き、CFOの戦略ウェビナースペシャル記事第二弾です!

今回はToshiyuki Tachibana, CPA, MBA and CMA/ CFO @Getingeにインタビューさせて頂きました。

ウェビナーに向けて投稿しております3回にわたった記事は来週月曜日に投稿しますChie Ikegawa様の記事がラストになります!

(本記事は2022年8月18日に開催したウェビナー「CFOの戦略2」に先駆けて、登壇者の方々のアンケートから書かれた記事になります)

「CFOの戦略」アーカイブ動画:https://lnkd.in/gpvSymQ5

「CFOの戦略2」アーカイブ動画:https://youtu.be/x55Fcgqrf-4

それでは第二弾の記事です。下記ご覧ください。

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自己紹介をお願いいたします。

橘様:1960年東京生まれ。

千葉県立船橋高校出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、当時一部上場の財閥系の海運会社に入社。

経営企画8年、営業2年、財務8年、シンガポールの海外現地法人の経理総務担当者としての赴任2年。同じグループの大企業や官庁、大手金融機関とのやり取りで学んだことが多かったですが、特に外資系の資源コングロマリットとジョイントベンチャーで18万トンの荷物を運べる貨物船をオーストラリアTaxリースを使ったスキームで韓国の三星に発注するプロジェクトに二年間従事したのがその後の外資への転職の一つの契機になったかと思います。

シンガポールより転職活動を行い米国の大手通信会社AT&Tジャパンのアジア・パシッフィック・ファイナンスに2002年に転職。転職35歳限界説がまことしやかに言われる時代でしたが42歳の時でした。上司の定年に伴い日本CFOに就任。米国本社の判断で日本の事業の大部分を日本企業(インターネットイニシアティブ:IIJ)に売却することとなり、そのM&Aに関与すると共に売却後に大部分の従業員と共にIIJの子会社に移籍しPMIを主導した二年間を含めて10年間勤務。上司は香港のAPAC Regional CFO 。

2012年、ロボット手術システムであるダビンチの日本での立上げの為にIntuitive Surgicalの日本法人に本社CFOのダイレクトリポートであるExecutive Finance Directorとして入社し、本社マネージメントと共に日本の組織・施設の立上げに従事。経理・財務・契約・ロジスティックス・カスタマーサービス・ファシリティーなど30数名を採用・管理。代理店経由より直販へのビジネスモデルの変換、代理店からのビジネス継承をリード。米国本社のトレーニングセンターの水準のものを都内で1,500坪の広さで実工事期間半年で作りあげたのが一番の思いです。

2017年に東京大学発でGoogleに買収された二足歩行ロボット部門のソフトバンクへの売却案件の売却後のバックオフィス全般の立上げ・管理の為にGoogleにAdministrative Officerとして入社しましたが、売却条件の未成就でチームが解散することとなり、2018年7月スウェーデンの医療機器メーカーであるGetinge Group Japan K.K.にJapan Regional CFO として入社。手術室周りの機器である手術台、照明は特にハイエンド製品として定評があり国内のハイブリッド手術室の9割で使用されています。手術に使用する麻酔器、新型コロナの治療で話題となった人工呼吸器やエクモ対外循環では世界的なリーダーで、そのほか洗浄滅菌器や産業用のライフサイエンス部門を擁する企業です。40か国以上で10,700人の従業員が働いており、製造拠点はフランス、中国、ドイツ、ポーランド、スウェーデン、トルコ、オランダ、英国、米国と真にグローバルな企業です。

上司はドバイにいるフランス人のGlobal Sales CFO。日本法人の取締役としてその成長をサポートすると共にGlobal sales Finance Leadership Team の一員としてグローバルでの協働にも関わる。担当はファイナンス、ロジスティックス、ITの他、国内の支店。

【コロナの影響、CFOとしてのチャレンジ】

コロナの影響によって何か今までと変わったことはありますか?よかったこと、悪かったこと両側面から教えてください。

橘様:良くも悪くも不確実性が増大して企業経営の方向性に関する判断が今まで以上に厳しくなりました。

顧客サイドにおいても人工呼吸器の政府調達という大きな需要が生じた一方で、手術の遅延による消耗品の需要の減少、病院の経済の悪化による手術室関係の新規投資の抑制という動きがあり、どこで攻めていくかとの判断とその後の迅速な行動が業績を大きく左右することになりました。

また生産サイドでは部品の不足による生産スケジュールの遅延、また国際輸送の乱れによる輸送時間の延長化により、販売するべきものの適時確保がもうひとつのチャレンジになりました。

加えて世界的なインフレの高騰による生産コストの上昇をカバーする為の値上げについての本社からの要請が強くなり戦略の立案、実行を余儀なくされています。

良かったことはコロナ前から弊社では在宅勤務が推奨されていましたが、コロナの蔓延を受けて会社勤務日と在宅勤務日を上司と協議して決定し、業務の性格が許す場合にはほぼ在宅勤務での就業を許可するようになっており、通勤時間のセーブによる生産性のアップ、ワークライフバランスの向上が図られたことです。会議・トレーニング・懇親会も原則、Teamsで行い、出席のできない方のために録画を行うこともあります。

CFOとしてご活躍される上で、チャレンジングだと日常で感じる業務・役割はなんでしょうか?

橘様:グローバルとの関係では日本のおかれた状況についての理解の取得が難しいという点があります。

具体的には人口減少・高齢化、政府ヘルスケア予算の内容の変化、病院の減少と経営状況の悪化、国内コンペティターの存在、大学・公的病院への公的なサポート、個人の寄付が少ないことから製薬・医療機器会社への経済的便益の要請が強いという経済状況に加えて保険制度という独特の枠組みを理解しない価格設定、経費の削減要請が来た際にそれらを押し返して日本のビジネスの拡大を図る支障を取り除くことです。

国内的には、皆の意識のレベルが同一でないところをどの様に共通の方向に向けていくかが永遠のテーマです。毎月、メール、WEBでCFO通信を配信するほか、営業・サービスの部門定期会議に参加してコメントを 行うなどでアライメントの強化を図っています。

今までのキャリアの中で一番チャレンジングだったことはなんでしょうか?どうやって乗り越えましたか?

橘様:国内部門のM&Aによる売却の交渉を本社のM&Aチームが行っていたが事業計画について買い手の満足のいく説明ができずに、このままでは売却がとん挫した場合、大幅なリストラに切り替えなければならないという状況になった時です。

本社のM&Aチームにどの様な事業計画の作り方をしたのか、特にAssumptionを問いただして、買い手のオフィスに3日間通ってその場で回答できることは回答し、調べる必要がある事項は調べたのちに翌日報告するということを繰り返し、最終日には買い手から「やっと分かる人が来たので安心して買収できます。」と言う言葉を引き出すことが出来ました。基本に戻りますが過去のデーターのノーマライゼーションによるExit Run Rateの確認と、Incrementalな費用の出し入れをしっかりと説明して事業計画のベースの正しさを理解してもらうのがキーだと思いました。

CFOとして一番やりがいを感じるのはどんな時でしょうか?

橘様:やはりターゲットをやっつけるために押し出した作戦が当たってターゲットを達成し、従業員の皆さんと喜びを共有できるときです。

その過程ではマイクロマネージメントで従業員に自身のやるべきこと、どこまでできていてどこができていないかをKPIで提示して達成への意気を上げてもらうという難しいプロセスがあります。我々、ファイナンスはあくまでもビジネスパートナーです。そのサポートが功を奏して従業員の皆さんがやるべきことを理解して前に進んでいく姿を見るのは嬉しいものです。

【日本のファイナンストップとしてのチャレンジ】

今はどなたにレポートしていますでしょうか?また、その他海外との関わりはありますか?

橘様:ドバイにいるGlobal Sales CFOにリポートをしています。本社機能であるGroupと製品・製造に責任を持っているBusiness Areaに対して、販売、サービスに責任を持つのがGlobal Salesで10のSales Regionがあり日本もその中の一つのRegionになっています。

Global Sales CFOのダイレクトレポートとRegional CFOでGlobal Sales Finance Leadership Teamを構成しており毎月定例のミーティングがあり情報共有の他、Workshopなどが頻繁に行われています。各Business AreaにもCFOがおり毎月の製品毎のプロフィタビリティーの変化があった場合にやり取りを行っています。

またGroupとの間でもレポーティング上の質問が来る他、Treasury、Tax、Compliance、Internal Controlのチームとも頻繁なコミュニケーションがあります。

ITやロジスティックスについてはAPACでのプロジェクトも多く、他のCFOとWeeklyでのビデオ会議を行っています。

日本のファイナンストップとして、海外との関係性をよく保つためにしていることはありますか?

橘様:相手の求めている「解」を理解して相手がそれを上手く説明できるようにシンプルでかつそのまま使える様な回答をする様に務めています。モデルを使用したり、データーのサマリーを加えるのがその例です。

あと皆さん忙しいので締め切りを守ることは当然として、タイムリー回答する様に務めています。

APAC CFOもしくは本社CFOとうまくやっていくためのコツはありますか?何かうまくいった、もしくはうまくいかなかった事例はありますでしょうか?

橘様:インテュイティブサージカルの時は上司が本社CFOでしたので時間を無駄にしない様にWeeklyで行っていたOne on Oneの資料の準備に十分な時間を使って、情報共有、リクエストの別をはっきりとさせたプレゼンをする様にしていました。かなり厳しい人でみんなは恐れていましたが、私は率直に分からないところは自分の考えを述べた上で「これで合っている?」と必ず確認していたのと、彼は繰り返し質問をしてくるという傾向があって大抵の人は2つ目ぐらいの質問には答えられるのですが、その後が続かないところ、常に5つぐらい先の質問を想定していたというのが良かったのではないかと思います。

他の本社の同僚からは「CFOと橘のふたりだけで何でも決めて後で降りてくるのだから」と羨ましがられたことも多々あります。今の会社でも当初は上司がスペイン人でメールに中々返事をしてこない人で英語も皆が言うので間違いないと思うのですが上手くなくて何を言っているのか中々分からなかったのですが、急ぎの時は直接電話をするようにして丁寧に話すようにした所、大変喜んでくれました。

日本のマーケットは海外と比べても独特なマーケット、難しいマーケットと評価されることがありますが、これについてはどう思われますでしょうか?そして、日本のマーケットをCFOとして成功に導くための鍵はなんでしょうか?

橘様:先にも述べましたが社会状況・制度的な違い、文化的な違い、あと言語の壁があって独特なマーケットであることは事実です。しかし、詳細なデーター、歴史的な経緯を説明せずにだた「日本は独特」と言い続けることは、「日本=不透明な国」という判断につながり最近のコンプライアンス重視の風潮の中ではリスクのある国で事業縮小・撤退という惧れがあります。実際、AT&Tの日本事業の過半の売却の際もインフラを持たないことによる収益性の低さに加えて、業界慣行の不透明さが原因でした。

成功のカギは日本のマーケットの状況とその中での自社のポジショニングに応じた柔軟かつメリハリの効いた戦略を立てて実行していくことです。当然、実行前には本社に対して事実とデーターに基づいたロジカルな説明を行うことが必須です。

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みなさん、いかがでしたでしょうか?

記事の中でおっしゃっていましたが、CFOのポジションをサポートさせて頂いていると、ファイナンスビジネスパートナーとしての素質、が条件として入ってくる場合が多いです。素質とは?という点はソフトスキルのため、すごく難しいポイントかと思いますが、橘様の今までのチーム、関係部署、社外とのコミュニケーションの取り方をお聞きしているとこういうことなのか、というカギがいくつもあったように感じました。

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