先週に引き続き、CFOの方にご協力頂いたアンケートを元に記事を作成しました。
ウェビナーに向けた3週連続の記事は今週がラストです!
第一週目の記事はこちらから(Hirofumi Namba / CFO @ Schneider Electric)
第二週目の記事はこちらから(Toshiyuki Tachibana / CFO @ Getinge)
(本記事は2022年8月18日に開催したウェビナー「CFOの戦略2」に先駆けて、登壇者の方々のアンケートから書かれた記事になります)
「CFOの戦略」アーカイブ動画:https://lnkd.in/gpvSymQ5
「CFOの戦略2」アーカイブ動画:https://youtu.be/x55Fcgqrf-4
今回はChie Ikegawa/ FP&A アドバイザー・経営管理コンサルタント @Strat Consultingにインタビューしました!
池側様は、P&Gでキャリアをスタートし、外資系でCFOやFinance Business Partner/FP&Aを経験されたのち、今は日本企業のFP&Aビジネスパートナーを支援する活動をされています。
また、「管理会計担当者の役割・知識・スキル ―ビーンカウンターからFP&Aビジネスパートナーへの進化―」という書籍も出版されており、FP&Aビジネスパートナーに関してのプロフェッショナル、です。書籍のAmazonリンクも下記記載しておきますのでぜひチェックしてみてください!
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4502428116/honnoinfo-22/
それでは最後の記事です。下記ご覧ください。
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自己紹介をお願いいたします。(バックグランドも含め、できるだけ詳しくご説明頂けますと幸いです)
池側様:新卒でP&Gのファイナンス部門に入社して以来、2019年まで外資系企業の日本子会社CFO/FP&Aとして勤務しました。P&Gでは18年間在籍し、洗剤・紙製品・ビューティーケア商品などのFP&A, 日本全体の経営管理、アジアの研究開発費や一般管理費の担当、日韓の税務などを経験しました。日本マクドナルドでフランチャイズ財務部長、レノボ・ジャパンと日本ケロッグでは子会社CFO, ウォルマート・ジャパン(西友)ではコマーシャルファイナンスVPを務めました。
その間、日本企業との合弁を経験し、米国企業と日本企業のCFOの役割や経営管理組織の違いとその理由について興味を持ち、その後大学院で研究して博士号を取りました。先日「管理会計担当者の役割・知識・スキルービーンカウンターからFP&Aビジネスパートナーへの進化―」という研究書籍を中央経済社から出版しました。欧米企業でのCFO/FP&Aの役割、日本企業の経理・経営企画の現状、海外先進国でFP&Aビジネスパートナーはどういう経緯で生まれて進化したのか、日本企業はどのように変革すればよいのかなどをまとめています。
現在は、日本企業のFP&A組織・人材育成の支援をしています。また、プライム上場企業二社の社外取締役、慶應ビジネススクールの非常勤講師として経営管理を教えています。
【日本子会社ファイナンストップとしてのチャレンジ】
日本子会社ファイナンストップとしてご活躍されていた時期に、チャレンジングだと日常で感じる業務・役割は何でしたでしょうか?
池側様:日本市場で利益を伸ばすことが難しく、課題でした。競合の日本企業が世界一良い商品を世界一安く売る市場環境。欧米企業では営業利益率で15-20%が求められますが、日本企業は一桁。なぜ日本企業は利益率を高めようとしないのかを本社から聞かれ、調べて説明していたことがわたしの研究の原点です。特に消費材・食品業界では、日本企業は日本人向けに過度に質の良い商品を低価格競争に巻き込まれながら売ることになります。大きく利益を上げられない日本企業は海外進出もあまり進められていません。外資企業にとって、そのような日本企業が乱立する日本市場はあまり魅力的ではありません。そのせいもあるのでしょうか、外資企業が日本に置く機能が年々減少していることが残念ですね。
今までのキャリアの中で一番チャレンジングだったことはなんでしょうか?どうやって乗り越えましたか?
池側様:チャレンジングなことはいろいろありました。ある企業で新製品を投入してまったく売れないことがありました。その際に損失を低減することがファイナンストップの役目の1つです。出荷状況を見ながら、その後の投資をどのタイミングで打ち切るか、余った原料や在庫をどう処分するか、損失を税務上の損金にできるように資料を準備する、次のチャレンジのために学びをまとめるなど、貢献できることがいろいろありました。いずれにしろ、事業部門との連携が不可欠です。
日本子会社ファイナンストップだった時期に一番やりがいを感じたのはどんな時でしたでしょうか?
池側様:ある企業で、小さい市場で高価格・高利益な事業を維持していたのですが、その市場に複数の日本企業が参入したことで、価格破壊が起こってしまったことがありました。市場サイズは3倍に拡大しましたが、当社のシェアと利益率は大幅に下がりました。その状況でいかに当社の日本市場でのプレゼンスを維持するのか、本社に日本市場の状況と当社の対処方法を説明して支援を得るかが課題でした。私は競合日本企業の戦略・財務状況などを調査分析し、当社の日本チームと対策を協議し、製造設備投資や販促投資などについて本社の理解・了解を得ることに貢献できたと思います。その数年の間にすっかり市場が変化しましたが、なんとか当社事業も変革を起こし、売上と利益を伸ばして生まれ変わることができました。
【今、日本企業でFP&Aをやりたい方をコンサルされる際のチャレンジ】
今はどんな方をサポート?なぜそのようなサポートをされているのでしょうか?きっかけは?
池側様:FP&A機能を説明する自社ホームページを運営しており、そこに問い合わせや依頼があります。日本企業の経理・経営企画のミドルの方で自分がFP&Aビジネスパートナーになりたい、会社組織を変えたい方が多いです。まずは、米国企業のCFO/FP&Aについて説明し、企業のトップ・CFOの理解が得られるように説得し、改革チームを作っていただき、私が支援を進めて行きます。
最近は、外資人材が日本企業に転職したり、ファンドの投資先の日本企業に派遣されるケースが増え、わたしもそのお手伝いに参画するケースがあります。外資CFO/FP&A人材の新たな活躍の場が増えていると感じます。
日本企業でFP&Aをやりたい方をサポートする上で直面するチャレンジはなんでしょうか?
池側様:日本企業の場合、CFOと言っても経理財務担当で、管理会計については予算の集計しかしていない場合が多いです。中計や事業計画の策定、日々の意思決定は経営企画部門や事業部門の計数管理担当が行っている場合が一般的です。日本企業はメンバーシップ採用・ジェネラリスト育成型なので、経営管理・管理会計職が専門職とはみなされておらず、役割・必要なスキル・キャリアパスが不明確です。計数管理をしている人材がどこに何人いるかも把握されていないケースも多いです。
私がFP&Aについての講演や執筆を始めたころは、「米国企業ではこうしている」と伝えていただけだったのですが、それでは日本企業の方々に刺さりません。今では私が日本的経営をよく理解し、日本企業に合った形での改革ができるように支援しています。
最近はCxO体制やジョブ型雇用を取り入れる日本企業が増えてきました。まさに変革の時です。
今一番やりがいを感じる時はどんな時でしょうか?
池側様:今年から慶應ビジネススクールで社会人学生向けに、FP&Aを中心としたグローバル経営管理の講義を始めました。とても積極的に参加いただき、自社での実践に進めていただける方も多いようなので、今後の発展が楽しみです。
日本のマーケットは海外と比べても独特なマーケット、難しいマーケットと評価されることがありますが、これについてはどう思われますでしょうか?そして、日本のマーケットをFP&Aとして成功に導くための鍵はなんでしょうか?
池側様:外資系企業で日本子会社のファイナンストップを目指される方は、競争相手である日本企業の経営管理手法の現状と課題についても理解をされることをお勧めします。日本企業は、専門性を問わない新卒一括採用、長期雇用、年功制、などを特徴とする「日本的経営」を元に、高度成長期には繁栄してきました。そのあとは残念ながら「失われた30年」です。それでも、大きな変革を起こす企業は少数です。
日本企業の経営管理組織の課題としては、経理と経営企画が分離していること、本社機能が弱くて子会社・事業部門を管理しきれず、全社視点でポートフォリオマネジメントができていないことなどがあります。高度成長期には本社が弱くても各事業が自律的に発展することができたようですが、現代においては、効率の良い欧米優良企業と戦うには不利な状況です。たとえば、日本の大企業は今やっと子会社・事業ごとにばらばらだった会計ERPの統一や、管理会計システムの導入を始めていますが、これは欧米企業と比較すると10-20年遅れている状況です。
組織のグローバル化も遅れていて、まだまだ日本と海外は別組織で、人事制度や給与体系も日本人だけは別扱いのところも多いですね。
経営についても、先ほど述べたように、日本企業だけが日本人向けの過度に質の高い商品で日本市場内で低価格競争を繰り広げる状況が続いてきました。最近やっと、“世界でも日本人の給料が安い”ことが明らかになり、問題視されるようになりましたね。今が変革のチャンスです。
経営管理については、米国企業のCFO/FP&A機能を取り入れていただくことで、かなりの課題が解決できます。CFOがその配下のFP&Aを子会社・事業部門に配置することによって、全社の経営管理をリードすることができるからです。欧米企業では当たり前の体制ですが、日本企業での実現はまだまだこれからです。
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みなさん、いかがでしたでしょうか?
池側様はCFOのキャリアを積まれたのちに、日系企業のFP&Aを支援する活動を選ばれました。CFOになった後のキャリアとしても面白いですし、日本のために活動したい、という方々はたくさんいらっしゃるので、とても参考になるお話しを当日はより踏み込んで聞けると感じました。
Directorレベル以上、エグゼクティブ採用のご相談は若泉久翔まで!