3月8日は「国際女性デー」です。あまり馴染みのないものかもしれませんが、1975年に国連が「女性が権利の獲得に向けたこれまでの歩みを祝うと同時に、女性被害者がいまだに跡を絶たないことを思い出す日」と制定したことに由来します。しかし、そのような日があり、日本も国連加盟国で、国際女性デーの認知が広がってきていながらも、社会はまだまだ完全な男女平等からは遠いのが現実です。もちろん、努力をしている企業もありますが、社会の大きな意見としては、例えば「女性の方が給料が低い」「面接時に結婚の予定などのハラスメントな質問を受ける」「男性の育休が認められていない」など課題が多いのが現状です。しかし今回は「どのような課題が多いのか」ではなく、「どうしたら女性が活躍できる職場を作ることができるのか」という点に着目し、まずはあなたの企業から始められる変化を見ていきましょう。
令和2年に行われた調査の結果、男性の平均給与はおよそ34万円、女性の平均給与は25万円と言われています。日本に限った話ではありますが、男女平等、格差のない社会が叫ばれている昨今でも、平均で見てこれほどの差があるのはにわかには信じ難い事実です。これにはもちろん、例えば「管理職に就任しているほとんどが男性であり、その男女比の違いが平均に差を生んでいる」という分析もできますが、それもまた別な男女の労働に対する格差の証拠です。女性の方が給与が低い、という事実は変わりません。もちろん、シンプルに「うちの会社では女性に5万円多く給与を与えている」という解決策もありますが、これは女性の優遇、男性差別であり、結局のところ問題の根本的解決にはなり得ていないのがわかります。
男性を女性と同じ水準にする、いわゆる「引き下げ」という案も考えられますが、格差を是正するために下の方に合わせるのは、結局は長続きしません。離職者を多く生み出すだけです。
この格差の原因は、非正規雇用とも、管理職クラスの男女比の問題とも言われています。しかし、「管理職に女性を雇用しよう」と動いても、すぐに解決される問題ではありません。雇用や教育はすぐに終わるタスクではないからというのもありますが、政府が「女性管理職を30%にしよう」と目標を掲げている現状でも、それが進んでいない実情から読み取れます。問題の根幹はもっと深いところにあるのです。
問題を違う観点から見てみましょう。管理職というのは、一般的には勤めていた人が業績や能力を認められ、昇格することによってなるものです。年功序列や、外部から専門の人を雇用するなどの方法もありますが、今回は昇進を主軸に考えてみることとします。
差別的意識はありませんが、女性と男性の生物学的な一番大きな役割の違いは「出産」にあります。人間は結婚というシステムを通して家族となり、子育てをする生き物です。また、出産とは「交通事故に遭って動けなくなる」のと同じくらい、肉体にダメージを与えると言われています。そのような状況でも仕事をしてくれる人、というのは、常識的に考えて稀でしょう。男性でも交通事故に遭えば必然的に仕事を休むことになります。出産との違いは、出産はそれが事前にコントロールできる、というところです。そこで一部企業では「出産や結婚の予定はあるか」という失礼極まりない質問が面接の時に行われるわけです。男性に同じ温度感で尋ねるのならば、「交通事故に遭って会社を休むつもりなのか、YESの場合は採用を見送る可能性がある」と聞くようなものです。とんでもない横暴ですが、これが行われているのは残念ながら事実なのです。
こういった性別を理由とした格差を解消するにはどうしたら良いでしょう? 全ての企業で一気に改善することは不可能ですが、まずは一番身近なあなたの会社から、変えていくためのアイディアを考えていきましょう。
まずやるべきは、「性別による差は存在する」と認識することです。女性の社会進出のためには真逆では、差別的なのではと思われるかもしれませんが、むしろそうではありません。性別による差は致し方なく存在するものです。手術を受けるかタツノオトシゴに生まれ変わるかしない限り、男性は出産を経験できません。これは覆しようがない事実なのです。しかし、それに目を瞑り、覆そうとすることは無駄な努力と言わざるを得ません。ならばその性別による差を「受け入れる」ことで初めて、では女性がより活躍するためには何が必要なのか、ということを理解できるようになります。
先に挙げた出産の話を例に考えてみましょう。前提として、面接の場で出産や結婚の予定を尋ねる無礼な企業は、多くが「採用した結果またそこに穴を開けて欲しくない=長く働いてほしい」という認識を持っていることかと思います。それでも女性にはそのような不躾な質問をし、男性にはしないのは、前提として「男性は結婚してもキャリアにブランクを作らない」という先入観を持っているからです。男性だって転職したり、のっぴきならない事情で退職することもあるというのに、です。こうした性差別を撤廃するには、「男性だろうと女性だろうと、その人を採用して、その人が穴を作る際に、きちんと穴埋めする準備をする」ことが重要になります。業務内容を人に依存せず、きちんと記した書類や、引き継ぎ資料を日頃から用意しておく、アップデートしておく、などです。
とはいえ、そんな有事の際の手引き書類を日頃から用意しておくのは難しいところがあるかと思います。そういったシミュレートをするために休暇が存在すると考えるはどうでしょうか。育休は、男性女性関係なく、病気や有給と同じように取得できる休暇制度であり、権利です。しかし即日取得がしづらい、できても仕事に欠員を出してしまい、業務を滞らせてしまう可能性がある、など何かと引け目を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。それは企業側も同じで、有休消化を推進しようと呼びかけたりしても、上司が率先して取らないと会社全体として申請しづらい空気が出ていたり、上司によって取得に対する心構えが違って部署ごとに有給に対する意見が食い違ってしまうこともあるかもしれません。数日の有給ですらこの有様なのであれば、そういった企業では育休、特に男性の育休など夢のまた夢でしょう。
TwitterなどSNSでは時折「夫が2週間の育休をとったけど2週間で何ができるんだ」とか「育休申請してもその制度はないからと有給を消化させられることになった」などといった投稿が散見されることがあります。こうした実情を見れば、男女に存在する待遇の差を埋める方法は一目瞭然ですよね。そう、社内のあらゆる制度や条件を、性別によらず、業務内容によって定めていけば良いのです。そうすれば、当然、「他の条件に差がないのに給与に差があるのはおかしい」という意識が生まれるはずです。
差別とは、基本的に先入観と実態を知らないことからくる決めつけによるものです。人間という生き物は外部情報を得るための感覚として、視覚にその大部分を頼っています。そこから得た情報から瞬時に判断できることは人間の優れたところではありますが、同時に相手に対する誤解を解くことを難しくしています。「この人は〇〇だから」と女性に限らず判断しそうになたら、一度立ち止まり、なぜ自分がその結論に至ったのか、そこから何を危惧しているのかを洗い出すことができれば、女性だから、という理由で判断を見送ったり、誤ったりすることは激減するでしょう。