2025年3月13日

仕事をする上でもっとも重要なモチベーションファクターはなんですか? ここ数年、私たちFocusCoreは、仕事のモチベーションについて得られた回答を年収ガイドで紹介してきました。これまではキャリア形成や企業文化、ワークライフバランスといったものが重視されてきましたが、最新の2025年版において、初めて「給料」が最重要ファクターとして浮上しました。この心境の変化はどのようにして発生したのでしょうか? 日本社会で何が起こっているのでしょうか?
物価の高騰
一番重要なファクターとして考えたいのが、物価の高騰です。ものの値段が上がれば、当然お金の重要度も高くなっていきます。より高い給料を求めて転職をすることも当然といえるでしょう。特に近年目立って値段が上がっていくのは米や卵、野菜といった食品類。米の価格上昇は2024年の半ばから目立ち始めましたが、この流れは2025年に突入してなお収束する様子を見せません。鳥インフルエンザの流行で、家計を支える卵の価格高騰したばかりか、夏の異常なまでの暑さによる農作物への影響など、食費が圧迫されているのが現状です。これに加えて嗜好品であるチョコレートやオレンジジュースといったものまで価格が上がり、生活において目にするほとんどの品が値上げの影響を受けました。
もちろん、物価が上がると賃金も上がります。弊社が公開している年収ガイドの2025年版では、給与が上がった、との回答が60%寄せられました。一方でボーナスも上がったと回答したのは半数以下の34%で、当然ながら「生活は追いつくものの、大きな消費は制限されている」という状況になります。
これだけならば景気がやや悪い、という軽度のダメージでしたが、ここに追い打ちをかけているのが税制改正です。
税制改正
働く高齢者に対して控除上限額が設定されることとなり、老後に必要となるお金が増えました。住宅ローン控除も2025年末には終了が予定されているため、今後マイホームの購入を考えるのはさらに難しい状況となりました。見込みで言えば所得税、法人税の引き上げもあり、「給料は上がるのに税金が増えて手取りが変わらないか、場合によっては減る」こともあるでしょう。さらに国民年金保険と厚生年金保険の料金もすでに引き上げられており、より良い給料の需要を高める形となっています。
コロナ禍からの脱却
お金を必要とする場面は何も食費や税金だけではありません。コロナ禍を脱却したことにより、一時期下がっていた土地代が、リモートワークの活性化での需要を受けて回復しつつあります。これにより、より高い家賃を支払う必要が出てきたほか、すでに購入していても固有資産税の引き上げが貯金を厳しくしているのです。
円安の影響
さらには昨今の円安を受けて、外資系企業が市場に参入しやすい環境になっています。これ自体は大きな問題ではないのですが、円安ということは日本人の労働力が安く手に入るということになります。企業としては少ない元手で優秀な人材を確保できるということであり、ライバルは日本の企業ではなく、同じビジネスを考える外資系企業となります。高い給料が日本人候補者を惹きつける形となっているのです。
こうした環境の中で、もしあなたが日本人で、現在日本国外に住み働いているならば、帰国して日本で仕事を探すのは待つべきかもしれません。家族や食文化、安全性など、日本に戻るお金以外の理由は多々ありますが、もし待てるのであれば、今はほぼ確実に現在の給料を下回るため、景気回復を待つ方が良いでしょう。
モチベーションを上げるのは高い給料なのか?
ここまで見てきて、では給料を上げれば社員が会社に残ってくれる、と感じますが、必ずしもそうではありません。求めているものが「給料」という形で表面化しているだけで、ここで本当に求めているものの正体は「安定」です。
国内の経済や情勢が変わっても変わらず雇い続けてくれるという安心感、この会社になら自分の生活を任せても問題ないという信頼を、日本に暮らす社会人は常に探しています。逆に言えば、給料が並程度だったとしても、安定した雇用を保証できれば、人は働き続けてくれるし、より高い給料を出すライバル企業とも差別化を図ることができるのです。
参考サイト
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