
パンデミックを経て、グローバルサプライチェーンは再設計の局面を迎えています。そして、この変化はサプライチェーンの構造的な不安定さを一段と浮き彫りにしつつあるのです。ロシア・ウクライナ間の紛争の長期化、エネルギー価格の変動、中東情勢の不透明さ、ホルムズ海峡の封鎖、台湾海峡を巡る緊張感……これらは調達コスト、リードタイム、在庫戦略に直接的な影響を与える経営変数として、グローバルリーダーなら誰もが注目をしています。
日本市場も例外ではなく、大きな返還展を迎えています。そんな今、注目すべきは外部環境だけではなくなっています。日本のサプライチェーン市場は現在、どうなっているのでしょうか?
日本の現状
コスト構造の変化
長期的な円安と輸入コスト上昇により、日本は「安定した低インフレ市場」ではなくなりつつあります。弊社も参加させていただいたIIC Partnersのエグセクティブサーチグローバルミーティングでは、製造・倉庫の拠点拡大を検討している企業にとって、インドやタイ、ベトナムでのエネルギーや原材料の価格、若手人材の人件費などが魅力的だる、という声が多く聞かれました。
一方で、日本は高コスト、バイリンガル人材不足、少子高齢化による人材不足などの要因が、P&Lに打撃を与えている現実があります。
かつては「予測可能な市場」であった日本は、その前提が崩れ始めているのです。加えて、日本独自の商慣習や文化が、日本市場でのビジネス難しさを際立たせているのです。
賃金と人材流動性の構造変化
賃上げを求める声は大きいものの、実質賃金の伸びは限定的な範囲に収まっています。一方で、働き方の前提は大きく変わりました。リモートワークの浸透により、日本国内のみならず、APAC全体を視野に入れたキャリア選択が現実的に可能となっているのです。これは、外資系企業への転職に対する心理的ハードルを下げる役割を買っています。
このような変化が、「安定市場」「販売拠点」とされる従来的な日本に対する見方を脱却させつつある、というのが現状です。では、それを踏まえて、今後日本市場はどのように変わっていくのでしょう?
外資系日本法人サプライチェーンに起きる変化
外資系企業の日本法人や支社では、次の二つのことが同時に求められるようになります。あるいは、もう求められているのかもしれません。
- 日本市場の変化を感じ取った本社により、日本のオフィスとビジネスをよりグローバル最適化するように求める
- 日本市場では、従来の安定した市場と販売拠点を維持するべく、また日本の独自性の観点から、ローカル対応の柔軟性を本社に求める
二つの相反する期待は、本社と日本法人のギャップを広げかねません。具体的には、
- サプライヤーの再評価
- 在庫ポリシーの再設計
- ローカルサプライヤー活用の検討
- APACにおける日本拠点の役割再定義
などといった、より高度で迅速な判断と高い自立性が必要になります。本社と日本法人のギャップを埋め、同時に競争優位に繋げるためには、サプライチェーン組織そのものと、そこに立つリーダー人材の再定義が重要です。
今後求められる、新しいサプライチェーン人材とは
企業は今後、どのような人材を採用・育成すべきなのでしょうか?
Japan Market Interpreter
日本特有の商慣習や文化を理解しながら、それをグローバル基準と戦略レベルで国際的に橋渡しできる人材です。単なるバイリンガル人材を超えて、本社と現場の意思決定を整理し、日本チームのエネルギーを引き出しながら双方をつなぎ合わせることができる存在です。
こうした人材の知見は、AI時代の到来においても代替が難しく、長期的に育成していくことで、5年後、10年後には莫大な知的資産が蓄積されることになります。
Cost-Resilience Balancer
コスト構造を理解し、サプライチェーンの利シクを定量化しながら、複数のシナリオを構築できる人材です。重要なのは、これを役職や階級、経験の違いを超えて理解・説明できるという点です。
効率重視のオペレーションマネージャーから、ビジネス視点を持つリーダーへと進化するのは簡単なことではありません。しかし、適切な人材が一人チームに入るだけで、曖昧だった意思決定が整理され、長期的戦略が見えやすくなります。
Regional Integrator
中国、ASEAN、日本といったAPAC地域のビジネス文化や規制を理解し、地域を横断するプロジェクトを推進できる人材です。求められるのは語学力だけではありません。文化理解、時差への柔軟性、状況への適応呂億、忍耐力も求められます。
日本中心のキャリアを歩んできた人材が市場には多く、海外対応の経験といっても、短期出張で得られるのはあくまでも”お客様”としての表面的な理解にとどまります。真の意味で地域をつなげる人材は依然として希少です。
Change-Ready Leader
変化に慎重な組織の中でも、データと理論を用いて合意形成を進められるリーダー人材です。大事なのは、アイディアが個人的な思いつきではなく、充分な根拠に基づいていることです。
多国籍企業にとって、日本での変革は技術的な課題よりも組織的な課題である場合が少なくありません。そのため、こういった人材は外部からの採用が有効となるケースもあります。
企業が”今”準備すべきこと
こうした人材を採用するために、企業は次の三点を改めて確認する必要があります。
- 現在のサプライチェーンリーダーは、効率とレジリエンスのどちらを重視しているか(そしてそれが企業としてうまくいっているか)
- APAC系系を持つ次世代人材の明確な育成計画が存在するのか
- 日本国内に限定性ない採用戦略を構築できているか。採用に関わるパートナーや社内の人事担当者が視野を広く持っているか
人材採用や育成の費用はコストではありません。いずれ起こる供給ショックや人材不足に備えるための保険なのです。
日本市場は、構造転換展の入り口に立っています。ですがこれはチャンスでもあります。外資系企業にとって、日本法人のサプライチェーン機能が、単なる実行部門から戦略的意思決定の拠点へと進化する絶好の機会なのです。これを現実のものにできるかどうかは、組織設計と人材戦略にかかっています。変化が見えてから、ではなく、変化を迎えようとしている今こそ、5年後、10年後を見据えたサプライチェーン人材の再設計が求められているのです。
FocusCoreでは、日本市場に精通したバイリンガル、バイカルチャーのサプライチェーンディレクターやカントリーマネージャー、CFO、HRディレクターなどを紹介することで、多くの企業でAPAC組織の改革を支援してきました。
もしサプライチェーン組織やリーダーシップについて、未来を見据えた再設計図がまだ描ききれていないと感じられるようでしたら、ぜひ一度 info@focuscoregroup.com までご相談ください。具体的なポジションが決まっていなくとも、市場の現状や採用可能性、組織設計の選択肢について、15年に及ぶ私たちの知識と経験を共有させていただきます。
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