
FP&Aの採用が日本でも広がりつつあります。外資系企業に見られるポジションは、その有用性とは裏腹に、運用や評価がまだ難しい側面もあります。
全3回でお送りするFP&A採用市場を巡るシリーズ、第2回の今回は、FP&Aに役立つスキルや、レベルによって求められる内容について詳しく見ていきます。
第1回の記事はこちら→ 直近の採用傾向と求められるスキル Part1/3
FP&Aで評価されやすいスキル
現在のFP&A採用で求められるスキルは、大きく分けると四つあります。
1.FP&Aの基本業務を一通り回せること
まず必要になるのは、FP&Aとしての基本的な実務経験です。
具体的には、次のような業務です。
- 予算策定
- 売上予測の更新
- 予算と実績の差異分析
- 月次のマネジメント報告
- P&L、バランスシート、キャッシュフローの分析
- 経営陣向け資料の作成
- 年間計画や中期計画のサポート
Analystレベルであれば、これらの業務の一部を担当した経験でも評価されます。
一方、Senior AnalystやManagerになると、担当部門の予算、売上予測、月次分析を自分で回し、事業責任者に説明できることが期待されます。
2.ビジネスパートナーリングの経験
現在、最も差がつきやすいのがビジネスパートナーリングです。
ビジネスパートナーリングとは、ファイナンスの中だけで仕事を完結させるのではなく、営業、マーケティング、SCM、ITなどの部門と連携し、事業上の課題を数字から考えることです。例えば、売上が計画を下回った場合、単に差異をレポートするのではなく、営業部門に状況を確認し、顧客別、製品別、チャネル別に原因を分解します。そのうえで、価格変更、販促費の見直し、在庫調整、投資の延期など、次に取り得る選択肢を整理します。
採用面接でも、「どのようなレポートを作っていましたか」より、「その分析をもとに、事業部門の意思決定をどう変えましたか」と聞かれるケースが増えています。
3.システムやデータを活用する力
Excelは引き続き重要ですが、Excelだけで業務を完結させるFP&Aは減っていく可能性があります。
現在の求人では、SAPやOracleなどのERPに加え、Power BIやTableauなどのBIツール、AnaplanなどのPlanningシステムの経験が評価されます。
Senior FP&A Analystの求人でも、高度なExcelスキルに加えて、ERPや財務システムの使用経験が求められています。ただし、採用ではツール名を並べるだけでは十分ではありません。どのデータを取り込み、どのレポートを作ったのか。手作業をどれだけ削減したのか。分析の精度やスピードをどう改善したのか。そこまで説明できると、システム経験の説得力が上がります。
4.英語で数字を説明できること
外資系企業では、日本語と英語の両方を使えるFP&A人材が引き続き不足しています。
Morgan McKinleyの2026年市場分析でも、専門スキルと日英バイリンガル能力を持つ人材への需要が供給を上回っているとされています。
ただし、採用で評価されるのはTOEICのスコアだけではありません。実際には、
- 英語で売上予測会議に参加した
- 海外上司に予実差異を説明した
- APACやGlobal HQ向けの資料を作成した
- 海外のステークホルダーと予算を調整した
といった経験が重要です。
英語を使えることよりも、英語でファイナンスの仕事を進めたことがあるかが見られます。
役職レベルによって期待される役割は違う
同じFP&Aでも、AnalystとManagerでは企業から求められる役割が大きく異なります。
FP&A Analyst
FP&A Analystには、データ集計、レポート作成、予実差異分析、売上予測のサポートなどが求められます。
ただし、最近は単純な集計担当ではなく、数字の変動要因を自分で調べ、必要に応じて他部門に確認できることも期待されています。指示された資料を正確に作るだけでなく、その数字が何を意味しているのかを考えることが重要です。
Senior Analyst、Assistant Manager
このレベルでは、特定の事業部門やP&Lを担当し、予算、売上予測、月次分析を一通り回せることが求められます。事業責任者との定例会議、マネジメント・プレゼンテーション、業務改善、システム導入などを担当することもあります。FP&A Manager候補として採用する企業では、後輩の指導やプロジェクトのリード経験も評価されます。
FP&A Manager
FP&A Managerになると、分析能力だけではなく、社内への影響力が重要になります。各部門から提出された予算をそのまま集計するのではなく、前提が妥当かを確認し、必要に応じて修正を求める役割です。
経営陣に対しては、実績の報告だけでなく、今後のリスクと機会を説明し、複数の選択肢を提示する必要があります。
チームマネジメント、海外本社との調整、全社戦略のリードなども含まれるため、Managerクラスではファイナンスの専門性とコミュニケーション力の両方が求められます。
経理からFP&Aへの転職は可能なのか
経理からFP&Aへのキャリアチェンジを希望する方は多くいます。経理経験者は、財務諸表への理解、月次・年次決算、正確性、内部統制、ERPの使用経験などを持っているため、FP&Aに移るうえで有利な部分があります。
一方で、経理経験があるだけでFP&Aに転職できるとは限りません。企業が気にするのは、過去の業務に以下の経験が含まれているかです。
- 部門予算を作成または管理した経験
- コストや収益性を分析した経験
- 実績の変動要因を説明した経験
- 将来の数値を予測した経験
- 経営陣向けの資料を作った経験
- 他部門と数字について調整した経験
経理からFP&Aを目指す場合は、決算業務を細かく説明するだけではなく、管理会計や事業支援に近い経験を拾い出すことが重要です。
例えば、月次決算後に費用の増減要因を分析していた、部門責任者とコストについて話していた、資金繰りの見込みを作成していた、といった経験もFP&Aにつながる可能性があります。
FP&Aに求められるスキルやキャリアパスが明確になったところで、次に避けて通れないのが「AIの台頭」です。データの集計やレポート作成の自動化が進む中、FP&Aの仕事は今後どうなっていくのでしょうか?
シリーズ最終回となる第3回では、最新のAIツールがもたらすFP&A業務の変化と、これからの時代に求められる「事業を動かすファイナンス人材」の条件について解説します。
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